原作改変?『ユーフォニアム3』第12話の内容は? 賛否両論と話題になっています。

「響け!ユーフォニアム3」第12話のアイキャッチ画像 アニメ
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

音で決める。パイヨミです。

風の噂でアニメ『響け!ユーフォニアム3』が今すごいことになってると聞かされ、遅ればせながら最新話を見てみると、「確かにこれは……」と思う展開になっていましたね。

レビューしていきたいと思います。

賛否両論の展開

私は原作を読んだわけではありませんが、調べたところ第12回「さいごのソリスト」はこれまでの微細な改編とは異なり、決定的なところで違いがありました。

「まさか、久美子が負けるのでは……?」

”原作とは全く違う展開”と友人から聞いてすぐさま頭に浮かんだのは、そんな番狂わせでした。原作では全国大会を前に黄前久美子がソリストを奪い返すという情報を事前に入手していましたから。

結論から言うと、その通りでしたね。

第12回を見る前に想定していた展開とおおむね一致した内容になりましたが、私がアニメを見た率直な感想としては、「上手く神回に仕立て上げた・・・・・・な」という感じです。

久美子の進路は妥当

今回のエピソードが賛否両論なのは、言うまでもありません。

なんせ部長が負けましたから。

原作では久美子が麗奈との約束を果たし、見事全国優勝という筋書きでしたが、第11回で久美子が鎧塚先輩の言葉を聞いて「音大には行かない」と決心した時点で、フラグは立っていたんです。

久美子は奏者の道ではなく、教師や指導者として今後も音楽と関わっていくのでしょう。

松本先生が「予想通り過ぎてつまらん」と指摘したように、視聴者の大半も割と早い段階で久美子にはその進路がしっくりくると思っていたのではないでしょうか。

相変わらず病んだ発言の多い麗奈からは、「音楽に関わらないなら、今ここで関係を終わらせる」みたいなこと言われる始末ですし、これはプレイヤー以外の方法で音楽に携わって生きろという啓示にほかなりません。

久美子が教師を志すであろう描写は、第三期に入ってから随所に散りばめられていました。

そもそもこの物語の当初から、黄前久美子という人物は見境なく厄介ごとに首を突っ込み、他人の揉め事にも口を出してしまう性分であったことから、その未来は見えていたように思います。

神回に相応しい演出

進路が定まったことで迷いが晴れた久美子は、黒江真由から目を逸らすことをやめた。

麗奈と香織先輩がトランペットのソロパートを競い合ったあの時と同じホールで、久美子と真由がソリをかけて公開オーディションを行う。これほど劇的な演出はなく、ドラマティックな効果を発揮しました。

真由の内情についても、原作から細かな改変があったようですね。今シーズンにおいて、”上手い転校生”というだけでは収まりの効かない悪女である彼女を擁護する演出にしたのは、監督もインタビューで答えていました。

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第8回時点での黒江真由の考察記事はこちら

結局、黒江真由の方が良い演奏をした。奏者として今後も生きていく麗奈は、より高みを目指せる音を選んだ。

久美子は吹いた直後から(あるいは吹く前から)負けを確信しており、真由が選ばれたことで動揺する他のメンバーに向け、”抗いようのない結果”として実力主義を受け入れさせました。

これまでのシリーズにおいて、リアリティのある複雑な人間模様を描いてきた「響け!ユーフォニアム」という作品の最後を飾るには、およそ相応しい展開であり、綺麗にまとまった回であったように思われます。

……ですが、どこか引っかかる気分にさせられたのは、私だけではないはずです。

進路とコンクールは別では?

根本的な話に戻ります。

今シリーズにおいて、黒江真由はあくまでも黄前久美子が最後に越えるべき壁ではなかったか?

黒と黄から連想する警戒色、あすか先輩と同じ銀色のユーフォを携えた真由は、明らかに久美子に立ちはだかる壁に違いないと、登場シーンから察しました。

今シリーズで久美子には、成し遂げるべきテーマが二つありました。

  1. 麗奈とソリを吹き、全国大会優勝を果たす。
  2. 自分にとって納得のいく進路を探す。

アニメ版ではこれらのうち、一つしか叶えることが出来ませんでした。

「ソリを奪われた(黒江真由に負けた)のは、音大に行くべきか悩む自分の気持ちが音に出ていたから」

そのようなことを久美子は、大吉山で麗奈に言いました。

悔しくても現実を受け止めるべきなのだと思わされる、良いシーンでした。

……で・す・が、

それは果たして本当に、黒江真由に負けるだけの理由になりえるでしょうか?

黒江真由は自分のせいで友人が音楽を辞め、コンクールにもオーディションにも懐疑的で、「たかが部活」とも口にしています。

そんな風に内心で思っている人に、進路で悩んでいるだけの久美子が負けますかね?

どっちの音が濁って聞こえるものか、考えてみれば分かりそうなものです。

まぁ、奏者として久美子よりも格段に腕前が上なのだとすれば、話はシンプルですよ。

どう足掻いても、久美子は真由に対して実力が及ばなかった。

と、なりますから。

けれど二人の奏者としての実力は拮抗しており、「どちらも甲乙つけ難い」と、滝先生もおっしゃっていました。

その証拠に府大会では久美子が、関西大会では真由がソリを担当しています。

黒江真由の方が明らかに上手いのなら、初めからソリを勝ち取るでしょうよ。

久美子が勝たなければならなかった理由は、もう一つあります。

第7回にて、黒江真由は「普通の人より自分がなく、好き嫌いもなく、大抵のことはどっちでもいい」と語っていました。

その言葉を聞いた久美子は、彼女に対するぼんやりとした苦手意識の正体に気づきました。

黒江真由は中学の頃の私(久美子)と同じで、何事に対しても本気で取り組んだことのない人。

一方で久美子は、麗奈に出会ったことで心が揺さぶられ、負けたら悔しくなるほどになりたいと願い、三年間必死に努力を重ねてきました。

実力がほぼ同等という設定にしたのならば、中学の頃の私を連想させる空虚な真由に対し、人間的にひと皮剥けた久美子が勝たなければ、物語として成立しないように思われます。

黒江真由を徹底分析

以下に記載する内容は、これまでの黒江真由の言動と行動を示し合わせ、私なりに導き出した考察となります。決して彼女が気に入らないだとか、そういうつもりで書いているわけではないので、一つの提案としてお読みください。

公開オーディションの直前、久美子は黒江真由に対してこう言いました。

「コンクールメンバーじゃなくても良い。でも、わざと下手には吹けない。頼まれて辞退はできても、自分から降りることはしたくない。演奏に……嘘はつきたくない」

引用:アニメ『響け!ユーフォニアム3』第十二回「さいごのソリスト」

この台詞を聞いた真由は、「見抜かれた!」というような顔をしましたね。

これが、黒江真由の本心だったのか!

そういう感情に訴える演出だったかと思います。

……で・す・が、

「演奏に嘘がつけない」と「自分から降りることはしたくない」は、イコールですかね?

オーディションに出るからには、”わざと下手に吹きたくない。”

これは納得がいきます。演奏に嘘がつけないからです。

では、頼まれて辞退はできるのに、どうして自分からは降りられないんでしょうか。

「部内の空気を悪くしたくない」もしくは「頑張ってきた人のポジションを奪いたくない」という理由で、本当に辞退を考えているのであれば、第11回で奏ちゃんが話していたように、一人で勝手に辞退すればいいんです。

けれど自ら降りたくない理由があるとすれば、それはプライドの問題かと思われます。

「演奏の上手い自分が、どうして自ら辞退しなければならないの?」

内心ではこういうことになります。

”頼まれたら辞退できる。”

これは、「相手が負けたという自覚を持ち、譲ってほしいと懇願するなら辞退してやってもいい」

と、言い換えられます。(言い方は悪いですが)

なので黒江真由の分析としては、恐ろしく自尊心の強い女性であるということが分かります。

それに加え、彼女は久美子と同様にあざとい一面を持ち合わせています。

黒江真由は自身が辞退すべきなのでは?という問いかけを、わざわざライバルである久美子本人に持ちかけています

部長だから? いえいえ、それなら滝先生でも良いでしょう。

副部長やパートリーダーにも相談はなし?

要するに、権力のあるものに相談を持ち掛けたわけではないということです。

では、どうして久美子に対して執拗に(6回くらい?)同じ問いかけをしたのか。

一応、久美子の調子を崩すための精神攻撃というパターンもあるにはありますが、転校したばかりの学校でそこまでやる人とは思いたくないですね。

恐らく、自身がオーディションで勝ち残った際の予防線に使いたかったんだと思います。転校した部内で大っぴらに悪者扱いはされたくないですからね。

「私強いけど、本当にいいの? 負けても言いっこなしだよ」

ざっくり言うと、こんな感じですかね。この可能性が高いのではないでしょうか。

相手に合わせていい顔するのは黒江真由の得意技ですし、オーディションをきっかけにまた音楽を辞めてしまう人が出た場合、その責任を自分が負うのは嫌ですから。

「自ら決めたことだから、仕方ないでしょ?」

極論としては、こう言いたいのではないか。

上記を踏まえ、彼女を端的に表現すると、黒江真由は相当にプライドが高く、あざとい女という見解になります。

  • 辞退しないのは相手よりも格上であると認めさせ、自身のプライドを保持するため。
  • ライバルに直接話を持ち掛けるのは、相手が負けた際に自分の地位が危うくならないための予防線。

演出するうえで、監督は黒江真由を悪者にしたくなかったんでしょうね。

それでも綻びはあった。

「演奏に……嘘はつきたくない。」の一言ではもはや片づけられないほど、彼女は致命的だったんです。

ならばいっそ悪者として、最後は華々しく散ってほしかった。

第12回は、本当に神回か?

第12回が素晴らしい回であったことは言うまでもなく、一つの結末としては良かったと思います。

これは、私が個人的にこうであったならと願うお話です。

1.やはり久美子には、勝って欲しかった。

理由については、先ほどご説明させていただきました。
第1シリーズから積み上げてきたものは、大事にしてほしかった。

2.進路の件は、黒江真由に勝ってから決めてほしかった。

高校生の間、必死になって頑張ってきた証として久美子は黒江真由に勝つべきだった。
そして、その先に彼女が何を見るのか。
三年間で、久美子はやり切ったという思いを持つはずです。
麗奈はさらに上を目指すでしょうが、久美子にとってはここがゴールのように思えてならない。
やはり自分は、奏者を目指すべき器ではない。
それよりも彼女は今、先生や先輩、後輩たちとの関わりの中で、自分のような特別な体験をさせてあげられる存在になりたい。
だから、私は指導者になる。

そんな展開が良かったかもしれないですね。

3.黒江真由が、最後に感情を漏らす

理想を言えば、最後の勝負で真由が負け、真に悔しさを覚えられないことに対して、これまで真剣に向き合ってこなかったことへの後悔や、久美子に対する羨ましさを覚えてほしかった。

その姿を見るのもまた、久美子が指導者を目指すきっかけの一つとなった。
とするのも、良かったと思うなぁ。

まとめ

いかがでしたか。
今回は記事の作成に時間がかかり、もう最終話が差し迫っている状況になってしまいました。

最終話がどのような結末を迎えるのか、結果的に一人散々な目に遭っただけの奏ちゃんが報われる時は来るのか。

そんなことを期待しながら、最終回を迎えたいと思います。

それでは、また。

予告編

第三期の予告編を紹介しておきます。
もし興味を持ってくれた方がいたら、第一話からの視聴をお勧めします。

配信情報

念のため、放送時間帯や配信情報が記載された公式サイトを張っておきます。
サブスクでも見放題がありますので、今から一気見してみるのもいいかもしれません。

それでは、また。

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