伊藤潤二の『うずまき』がアニメ化!漫画の内容をネタバレ解説します。

漫画『うずまき』のアイキャッチ画像 小説/漫画
ⓒ伊藤潤二/小学館

※本ページはプロモーションを含みます。

この町は、狂ったうずまきだ。
パイヨミです。

さて。今回は伊藤潤二の最高傑作(私的に)、『うずまき』についてご紹介したいと思います。

2024年内に国内でのアニメ配信も決定し、これは今こそ皆さんに知ってもらうべき時だと思い、意気込んで再び漫画を読み耽っていました。

やっぱり最高に面白かったので、詳しく解説していきます。

それでは、どうぞ。

『うずまき』とは

作品の概要

『うずまき』はホラー漫画家・伊藤潤二の作品で、小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて1998年7号から1999年39号まで不定期で連載されました。

2000年にはウクライナ出身の映像作家、Higuchinskyによって映画化もされています。

本作はうずまきによるホラーの大喜利とでも表現できそうな作品で、うずまきから連想される悲劇や怪奇現象があらゆる形で描かれています。

作品のあらすじ

あらすじ
女子高生の五島桐絵と、その恋人の斎藤秀一が暮らす黒渦町は、うずまきの呪いにかけられていた。川は渦を巻き、つむじ風が舞い、草や雲、火葬場の煙まで渦状に。
その脅威は自然現象のみならず、人々にも襲いかかった。身体はねじれ、渦巻いた髪は独りでに暴れだし、ついにはカタツムリの姿に変容する者まで。
次第に”うずまき”に汚染されていく町から逃れるべく、桐絵と秀一は脱出を試みるが……。

これまでは気にも留めていなかった、渦巻き模様。伊藤潤二が独自の世界観で表現すると、こんなにも上質な不気味さを生み出せるものか。

物語の全容を解説

初期の単行本は全3巻に分かれています。

連作短編となっているため各エピソードは繋がっており、物語を読み進むにつれて事態は深刻化していきます。

すべてのエピソードを紹介したいところですが、さすがに長くなってしまうので、今回は注目すべきタイトルを厳選しながら全体の流れをお届けしたいと思います。

1巻 -序章-

物語の序盤ということもあり、特定の人物が奇妙な行動を取ったり、怪奇現象に巻き込まれたりする内容がほとんどです。

「巻髪」だけは比較的派手な演出となりますが、未だ町全体を通しての問題視はされていません。

うずまきマニアその一/その二

本作の主人公・五島桐絵とその恋人・斎藤秀一の登場から、あっという間に秀一の両親がうずまきの呪いにかかって死亡するという、冒頭からエンジン全開の展開。

”うずまき”に魅了された秀一の父、斎藤敏夫はうずまきに対する執着がエスカレートし、自身がうずまき状になるという願望を叶えて死亡。

次いで夫の死によって極度のうずまき恐怖症にかかった妻の雪枝は、自分の体にあるうずまきを怖がり、すべて切り取ってしまいます。

例えば指紋だったり、つむじだったり……。

演出は非常に残酷なものの、どこかリアリティを帯びた展開ゆえ、トラウマ級の事件として否応なく脳裏に刻まれます。突然一人ぼっちになった秀一が気の毒で仕方ありません。

ちなみに斎藤敏夫の死にざまは、呪術廻戦で夏油傑の呪霊操術としてオマージュされましたが、あまりにそっくりすぎる描写に、世間ではパクリ疑惑が賑わっていました。

傷跡

桐絵のクラスメイト、黒谷あざみが登場。

”きれいでおとなしい子”という印象の彼女は入学当初から異常にモテていましたが、秀一だけは彼女に禍々しいものを感じて拒絶。

彼女の額にある三日月型の傷が町の呪いによって渦巻き模様に変異したことが原因でしたが、自分に振り向かない秀一に夢中になった黒谷は彼にしつこく付きまといます。

一方で額の渦巻き模様は次第に大きくなっていき、身体にめり込んでいく……。

これまた恐ろしい描写でしたが、クラスメイトの男子を渦に飲み込むシーンはなぜだか笑ってしまいました。

最後は自分の身体ごと渦に飲み込まれ、黒谷あざみは消滅してしまいます。

巻髪

個人的には、1巻で最も面白かったお話。

ある日、桐絵の髪が突然渦を巻き、切ろうとすると首を絞めつける始末。諦めて放っておくと、髪は誇らしげに渦を巻いてポーズを取りました

桐絵の派手な髪は人々の注目を集め、それを羨んだクラスメイトの関野さんは、数日後同じく渦を巻いた髪で彼女の前に現れます。

髪同士はそれぞれに渦巻きの誇示をはじめ、どちらが目立つ存在か競い合います。

ここへ来て桐絵はようやくうずまきに町が呪われていることを確信しますが、渦を巻いた髪は本体である人間の生気を吸い取るらしく、気力を失った彼女は逃げることもできず、日に日にやつれていきます。

膠着状態だった髪同士のバトルが激化したある日、秀一が桐絵の髪を切ることに成功してその場をおさめますが、さらなる注目を集めようと街を闊歩した関野さんは、やがて全ての生気を髪に吸い取られてミイラのような姿になり果ててしまいます。

伊藤潤二らしいコミカルな演出が光るタイトルですが、幕引きはやはり悲惨なものでした。

2巻 -浸食-

うずまきの呪いが徐々にエスカレートしていき、ついには町にまで被害が出る展開となります。

非常に恐ろしいタイトルもいくつかあり、ホラー作品として見応えのある内容となっています。

ヒトマイマイ

雨の日にだけ登校する、片山くん。動きが鈍く、クラスメイトからは嫌がらせを受けています。

ある日彼の背中に渦巻き模様が浮かび上がったかと思えば、数日のうちにカタツムリの甲羅が出来上がり、最終的には目玉が角のように伸びて全身がカタツムリになってしまいます

ここからの展開がさらに狂気。なんと片山くんは飼育小屋で飼われることに。

彼をいじめていた津野くんもまたカタツムリの呪いにかかり、二人揃って飼育小屋に入れられると、二匹は突然交尾を始めます。

数日後に飼育小屋から逃げ出した二匹。学校の裏山から彼らが埋めた卵が発見され、繁殖を阻止しようと卵を踏みつけた横田先生が次の犠牲者となったところで幕切れとなりました。

この後どうなったんだよ、という余韻の残る恐ろしさがありますね。

蚊柱

このタイトルの前に「黒い灯台」というお話があり、そこで全身に火傷を負った桐絵が入院している場面からエピソードが始まります。

奇妙な渦状の飛び方をする蚊が大量発生し、それを見ているうちに血を吸われてしまう。

ある日、大量の妊婦が蚊によるひどい虫刺されで搬送されましたが、その晩を境に夜が明けると数人の変死体が発見されます。

夜に桐絵が廊下に出ると妊婦たちが徘徊しており、それぞれに手回しドリルを持っている。病室を出入りする彼女らは、寝静まった患者の身体にドリルで穴をあけ、生き血を吸い始めます

目撃した桐絵は妊婦たちに襲われますが、偶然手に取った殺虫剤で反撃。

間一髪で桐絵が逃げ延びたところでお話は終了となります。

実はこの後に「臍帯」というタイトルが続き、妊婦たちの産んだ赤ちゃんをめぐってさらなる大事件が起こりますが、それについてはぜひコミックを読んで恐怖を味わってください。

台風1号

病院の惨劇から辛くも逃げ延びた桐絵。

大型の台風が町に接近し、夜な夜な雨風の音に交じって「キリエ」と呼ぶ声が聞こえてくる。

朝になって彼女が窓を開くと、頭上の空には未だ台風の姿がありました。

どうやら桐絵は台風に見初められてしまったようで、彼女に付きまとう台風は激しい突風で町を破壊して回ります。秀一の手助けで一時は逃げ延びますが、とうとう渦を巻いた水柱に巻き込まれて宙に舞い上がります。

気がついた時には台風はトンボ池と呼ばれる池に吸い込まれ、2人は池から救出されました。

”台風がヒロインに付きまとう”という発想はいかにも伊藤潤二らしいですね。この被害で桐絵の家族の住む家屋は全壊してしまいます。

3巻 -混沌-

ここからの展開は、まさしく混沌を極めます。終末感が漂う町の惨状のなか、異常事態を受け入れてしまう者も。

被災者となった町の住人の感覚は麻痺し、やがて人間としての一線をも越えてしまう……。

この巻はタイトルごとの繋がりがシームレスなため、各話の一部展開を抜粋しながら全体の流れを説明させていただきます。

相次いで台風の被害に遭う黒渦町に、外部からやってきた取材班。リポーターの丸山千恵は突如竜巻に遭遇して車が横転。

助けを呼びに千恵が瓦礫の山を進むと縛られた子供たちがいて、それを解いてやると彼らは竜巻を発生させて周囲の家々を破壊して回ります。

複数回に及び台風を飲み込んだトンボ池の影響から、人間のちょっとした素早い動きで竜巻が起こる事態になっている様子。

桐絵に助けられた千恵は、彼女たちが現在寝床にしている長屋に招かれる。

どういうわけかそこだけはいくら台風がやって来ても崩壊しないため、長屋の中は台風のせいで家を失った者たちで溢れかえっていた。

混沌/続・混沌

竜巻を発生させてそれを乗りこなし、町内を好き勝手に暴れ回る連中、通称バタフライと呼ばれる若者が増え始めていた。

辺り一帯は瓦礫と化し、食糧も尽きた町から脱出を試みる者が現れるものの、うずまきの恐ろしい力によって町から出ることが叶わない。

竜巻を起こさぬように住人がゆっくりとした動作で移動するため、ヒトマイマイが流行り病のように流行し始めます

長屋から追い出された桐絵たち家族と千恵が次の寝床を探していると、ヒトマイマイを食べる蝶族を目撃。彼らに襲われた桐絵たちは父親が竜巻によって吹き飛ばされ、行方不明に。

間一髪のところで秀一に助けられた彼らは別の長屋に辿り着きますがそこもいっぱいで、中にいる人々は押し合いへし合いの末にぐるぐると絡まり合っていました。

仕方なく崩壊した家屋の陰に隠れて暮らしていましたが、ある日桐絵が戻って来ると母親の姿が見当たらない。

深刻な食糧難により、もはやヒトマイマイになりかけている者は家畜同然に扱われるなか、今度は弟の満男の背中に渦巻き模様が現れます。

脱出/迷路/遺跡

住人が長屋の増築を始めるのをよそ目に、町からの脱出を試みる桐絵たち。

弟の背中は盛り上がり、一刻を争う事態。行く道で合流した数人の男は、ついにヒトマイマイとなった満男を狙って追いかけてきます。

弟を逃がした桐絵たちが町に戻ると、いつの間にか数年の月日が経ち、長屋の増築が進んで渦巻き状になっていました。

両親を探して長屋を訪れる桐絵。トンボ池の付近に2人がいるという噂を聞きつけた彼女はそちらを目指しますが、全ての増築を終えた瞬間に長屋から人々が消え、トンボ池のあった場所に太古からそこにあったとされる石段を発見。

果てしない石段を降りていく桐絵と秀一。途中でぐるぐるになった男に襲われて秀一が落下すると、桐絵は急いで後を追います。

辿り着いたのは巨大な渦巻き状の建造物。もはやその場から逃げる気力すら失われた2人は、互いの手を取り合ってぐるぐると絡まり合い、やがてうずまきの呪いは終わりを迎えます。

最後は感無量といった気持ちにさせられましたが、登場人物たちにとっては何一つ救いのないお話でしたね。

▶︎漫画『うずまき』の印象的なシーンはこちら

アニメはどこで見れるの?

北米で先行配信

『うずまき』のアニメ版は『Uzumaki』というタイトルで制作され、2024年の9月28日から北米にて放送されています

配信はアメリカのカートゥーン・ネットワーク/Adult Swimの放送枠「Toonami」と、ワーナー・ブラザースのストリーミング・プラットフォーム「Max」で、全4話の構成になっているようです。

このアニメ版はもともと2020年に放送が予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で2021年6月に放送の延期が発表。2022年の10月より放送を開始する予定で制作が進められていたものの、2022年の6月にクオリティ追及を理由に再度延期されました。

海外でも大人気の漫画家・伊藤潤二の作品となれば、アニメの注目度は非常に高いと思われます。

公式のXにて声優陣も発表されていたので、以下にリンクを貼っておきます。

日本での配信はいつ?

アニメ版『Uzumaki』は、2024年12月20日からNetflixにて独占配信が予定されています。

ようやく日本でも、動く桐絵が見られるわけですよ。こりゃ見逃せない。

監督はこれまでに『蟲師』や『惡の華』などを手掛けた長濱博史で、音楽担当はアヴァンギャルド・サックス奏者のコリン・ステットソンとなっています。

制作会社はProduction I.G USA。

I.Gが米国に現地法人を設立しているとは知りませんでした。

配信されるのが待ち遠しいですね。

まとめ

いかがでしたか。

全体を通して悲しいお話ではありましたが、呪いという未知の恐怖にさらされるホラー要素とギャグのバランスが良く、伊藤潤二らしさが全開の演出となっていました。

『富江』のようなカリスマ的存在こそいないものの、作品としての総合的評価は個人的にこちらの方が上かと思われます。

合わせて読みたい
『伊藤潤二作品』の魅力について知りたい
伊藤潤二の『富江』はどんな作品?

書籍情報

原作の漫画が気になった方は、こちらでご覧になることが可能です。

電子書籍はこちら

コミックの購入はこちら

アニメ予告編

アニメの予告編を紹介しておきます。

予告編を見る限り色彩が落ち着いていて、どんよりとした中に静かな恐怖が味わえそうな雰囲気ですね。

アニメーションで見るとまた違った印象を受けると思いますので、そちらも合わせてご覧いただければと思います。

それでは、また。

漫画全巻ドットコム

コメント

タイトルとURLをコピーしました