伊藤潤二の『富江』はどんな漫画?その魅力や面白さをご説明します。

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下の下よ。パイヨミです。

伊藤潤二のデビュー作にして、代表作。

名前くらいは聞いたことがある、という人は多いかもしれない。

『富江』は1986年の第1回楳図かずお賞にて佳作入選を果たし、今なお不定期ではあるものの新作が出版されているほどの人気作である。

様々な監督、俳優陣を起用してあらゆる角度から実写化されたビッグタイトルであるにも関わらず、内容を誤解してる人がいるのではないか。

怖くて、グロいホラー?

間違ってはいない。

でもそれは、魅力の一部に過ぎない。

私も、伊藤潤二の漫画を手に取るまでは知らなかった。

本物のホラーとはこんなにもおぞましく、美しく、笑えるものだったとは……。

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男を虜にする富江

美しい。殺したくなるほど

川上富江は、長い黒髪に妖しげな目つきをした少女で、左目の泣きぼくろが印象的です。

シリーズによって容姿が異なるため、毎度黒髪とは限りませんが、絶世の美貌を持った少女であることは一貫しています。

富江の美しさに魅せられた男たちは彼女を愛し、例外なく殺意を抱いてしまう

「ん、なんで?」と思いますか?

そこがポイントなんです。

伊藤潤二は、読者の予想の斜め右を平気で行きます。

富江の美しさは、魔性とも言える魅力。
惹かれたというにはあまりに強烈で、形容詞し難い感情なのでしょう。

殺すだけでは飽き足らず、身体をバラバラにしたくなってしまうんですから。

そんな富江の性格は傲慢で身勝手。彼女を取り巻く男たちはまるで下僕のように扱われます。

常に良い感情を持たれるわけではなく、虐げられる立場を快く思わない連中もいます。

けれど彼女に対する愛情、怒り、恐怖などすべての感情は、やがて殺したい衝動へと結びつき、われ先にと押し寄せるような場面もあります。

愛ゆえに殺したくなるまでは思いつきそうですが、身体をバラバラにしたくなるなんて発想が凄すぎませんか?

気持ち悪くて、どこか変態的ですよね。

でも、ご安心ください。

伊藤潤二作品は、美醜にギャグを融合して作られたホラーです。

目を背けたくなるような場面も美しく描かれ、思わず笑ってしまうような不意打ちの笑いが散りばめられているので、決して嫌な気分にはなりません。

ホラー×ギャグはリスクが大

ホラーって、「何か理不尽に怖くて、後味が悪いもの」という印象が私の中にあったんですが、伊藤潤二の作る作品はどれも余韻が心地いいですね。

引き際が絶妙なおかげか、想像力を刺激されます。

また、ホラー×ギャグという作風は、個人的には非常に難易度の高い手法だと思います。

なぜなら不用意にギャグをいれると、却って作品の質を落としかねないという危険性をはらんでいるからです。

例えば、下記のような問題点が挙げられます。

  • せっかくの怖い場面で冷める。
  • シリアスな展開の最中に「今そんなことやってる場合?」とイラつかせる。
  • そもそもギャグの質が低いとお荷物になる。

これはホラー作品に限らず、様々なジャンルにおいて言えることかと思われます。

持って生まれたギャグセンスというのは、それほどに貴重な能力なのです。

少し話は逸れましたが、『富江』に関して言えば、ホラーの真髄である”美しさ”という点を持ち合わせているのもまた、最大の武器であると言えましょう。

合わせてキャラの個性も最高に狂っているので、相乗効果で他を圧倒する存在感を発揮するのです。

美女で高飛車というのが、男心をくすぐるんでしょうね。

姿形を変え、何度でも蘇る

毎度様々な方法で殺害されてしまう、富江。

「じゃあ、富江は単なるモチーフで、シリーズごとに全くの別人なの?」と思われる人がいるかも知れませんが、そうではないんです。

富江には再生能力があり、血の一滴でも残れば何度でも蘇ることが可能です

再生にはそれなりに時間がかかるため、醜い顔で首だけの状態になることもありますが、最終的には絶世の美女に成長します。

また、富江は分裂して増殖する性質も持っており、複数の富江が登場する場面も見られます。

とある話の中では、富江の再生能力を医療に活かせないかと考え出す気狂いな医師も登場しました。

ですがそれも上手くいかず、富江の細胞を移植した者は時間の経過とともに彼女そっくりの見た目になり、やがて内面も富江になってしまいます。

こういう発想が、また気味が悪くておしゃれですよね。

一方で増殖した富江同士は、敵対し合う傾向にあるようです。

睨み合いながらお互いを罵倒し合う場面は、なかなか面白いですよ。

自分で手を下さない

富江はあくまでも、華奢でか弱い少女。

自ら対象に危害を加えるようなことは基本的にはありません。(ちょっと禍々しい姿になる回もありますが……)

彼女の得意とするのは男を誘惑し、言葉で操ること

ひどい扱いを受けながらも、いつか富江を自分のものにしようと男たちは指示に従って言われるまま人を殺しちゃったりします。

「接吻」という回があるんですが、このお話はひどく印象に残ってますね。

同じ学校の男子生徒がアパートを襲撃するシーンがあり、その時に行われる行為が色々とやばくて、怖くて、また演出がおしゃれなんです。

「ただの男子高校生がこんなことしちゃうんだ」と、ふと正気に戻った時、ゾワゾワっと恐怖がこみ上げてきますね。

増殖した富江同士も、刺客を送り合っては互いを暗殺しようと目論みます。

ここでも自身は手を汚さず、言うことを聞いてくれる男にすべての犯罪行為を委ねます。

どうせ富江は死なないので、バラバラになって増えていくばかりですけど。

いやぁ、魔性というには本当に恐ろしいものですね。

彼女に魅了された者たちは皆、人が変わったように怖い顔になって、常軌を逸した行動をとってしまうんですから。

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まとめ

いかがでしたか?

私の説明で、『富江』の良さが少しでも伝わるといいのですが。
まだまだ伝え足りない気がしてなりません。

もし漫画に興味を持ったという方は、伊藤潤二傑作集の1巻と2巻が『富江』全シリーズを連載順(恐らくそうかと……)に掲載しているので、一気読みするならこちらを是非どうぞ。

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今後も伊藤潤二作品についてレビューしていきたいと思いますので、他のタイトルについても読んでいただけると幸いです。

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ではでは。またの機会に。

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