映画『カラオケ行こ!』の原作は?エンドロール後の刺青の意味とは。

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©︎和山やま/KADOKAWA / ©︎2024 『カラオケ行こ!』製作委員会

フリーザみたいやな。パイヨミです。

お恥ずかしながら、近頃体調を崩しまして更新がだいぶ遅れてしまいました……。

気づけば真夏日もなく、日の沈むのも随分と早く、日が暮れると肌寒いほどになりました。

秋の到来を感じさせる今日この頃、自宅にて空き時間に映画鑑賞に勤しんでいる私ですが、今回ご紹介するのはヤクザと中学生男子が一緒にカラオケに行くという一風変わったお話の映画です。

意外にも?ハートフルな内容だったので、ご説明していきます。

それでは、どうぞ。

『カラオケ行こ!』とは

映画『カラオケ行こ!』は『女の園の星』の和山やまが描いた漫画を原作とした作品で、漫画自体が初めて世に出たのは2019年の8月に開催された同人誌即売会「COMITIA129」のようです。

2020年の9月に加筆修正を加えてKADOKAWAより単行本化されましたが、COMITIAで頒布された同人誌はあっという間に売り切れるほどの人気だったそうです。

あらすじ
合唱部のコンクールの帰り道、中学3年生の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、そのまま拉致されてしまう。
狂児の所属している組では年に4回組長が主催でカラオケ大会が開かれ、そこで最も歌が下手だった者(=歌ヘタ王)に選ばれてしまうと組長から刺青を彫られるのだという。
何としても刺青を回避したい狂児は、合唱部の部長である聡実に歌の指導をしてもらいながら、次のカラオケ大会に向けて特訓に励んでいく……。

組長の彫る刺青はまだ未熟で、激痛が走るうえに絵心がないんです。

だからこそ狂児は必死になって回避しようとしているわけなんですが、合唱部の中学生に目をつける当たり、ちょっと馬鹿っぽいのがたまらないですね。

監督は『味園ユニバース』の山下敦弘、脚本は『MIU404』や『アンナチュラル』を手掛けた野木亜紀子が務めています。

舞台設定から面白い

ヤクザ×中学生の組み合わせ

中学生の頃って親戚や友達の親、教員などを除くと社会人との交友関係はほとんどなかったように記憶していますが、皆さんはどうでしたか?

ましてやヤクザなんてテレビ越しに見たくらいにしか経験がなく、「あぁ、一緒にカラオケ行ってたわ」なんて気軽に思い出話を語る友人もそうそういないでしょう。

そういった稀有な状況下、一読してコメディ漫画であることが認識できる世界観をさらりと作り出せる和山やま先生は、やはり只者じゃない。

黒服に黒光りする車。拉致されたうえ密室に監禁。もし現実に起きた場合は恐怖しかありませんが、フィクションだと思うとなぜか可笑しくて仕方がない。

聡実くんが毎回勝手にチャーハン頼んでるところは、個人的にツボでしたね。

ヤクザのくせに可愛い

聡実くんに指南を求め、歌の出来栄えを披露する成田狂児。

ヤクザでありながら不思議な包容力を備え、思春期特有のトゲトゲした対応を微笑ましく眺める姿は大人の余裕を感じさせる。

教養はないが粗暴な印象は受けず、幹部という肩書きがどこか説得力を持たせてくれます。

狂児役は綾野剛さんが演じていますが、スマートで優しい印象がマッチしているように思いました。”尖っているように見えて優しい”という彼自身の周囲からの評判のままのキャラクターではないでしょうか。

個人的には、ヤクザらしい恐そうな印象を時おり垣間見せてくれると良かったように思えます。

原作を読んだ限りでは、ひと昔前の堤真一さんの方が狂児にはピッタリだったかなと感じました。あの人は顔も強面で、声も低くて一見すると怖いですからね。お茶目な役もたくさんこなしてきているので、上手くやってくれたように思います。

色気でいうと、綾野剛さんに軍配が上がりそうですが……。

他にも聡実くんに歌を聞いてほしくて集まるヤクザ連中が出演しますが、話している時は恐いのに何となく歌っている姿は可愛いんですよね。

最後に登場する組長に関しては、完全にネタキャラでしたわ。

聡実くんを騙してにこやかに笑ったり、彼の歌に感動して涙を流したりする姿は短い出演のわりに印象深かったです。

聡実くんはオーディションにより大抜擢

岡聡実役を演じた齋藤潤は、オーディション当時15歳で役柄と同じ年齢でした。

演技や歌が上手い役者たちの中で彼が選ばれたのは、まだ未完成な部分が聡実くんに重なる部分があったからのようです。

覚えることもたくさんあり、特に歌の練習は大変だったようですが、私が映画を観て受けた印象としては、「え、綾野剛を食ってるんじゃね?」と思わせるほどの存在感でした。

撮影現場の緊張感が良い方向に左右したのか、声変わりを経験する多感な時期の少年というコンセプトに素晴らしくハマっていました

まだまだ未成熟ながら立ち姿には光るものがあり、目を惹きつける。選ばれるべくして選ばれた存在だなと思います。

原作との違いは?

映画はオリジナルの展開

私は原作と映画のどちらも見ましたが、結構捉え方が変わってくる場面は多くありました。

けれど物語の根本に変化はなく、良し悪しがつけられないほどどちらも完成度が高いと思います。

映画の方がオリジナルの要素を加えた分、ややドラマチックな印象を受けますね。

一方で原作は、聡実くんのモノローグが描かれているので、思春期の尖った印象というよりも気弱でお人好しな雰囲気を醸し出しています。

漫画ではすぐ泣いてしまいますから。

思春期らしさを表現

映画で特に変更点が見られたのは、合唱部の面々に個性を持たせたことと、聡実くんの部に対する向き合い方です。

原作での聡実くんは合唱部の練習にきちんと参加し、喉の調子が徐々に悪くなってくることに苦痛を感じつつも、発表の日まで頑張ってきました。

一方で映画版では歌えないことの恐怖心から逃避に走り、少しずつ合唱部から足が遠のくようになります。狂児とカラオケに行く日以外は映画を見る部に入り浸り、自身の思いの丈を一人の部員に語りかける。

この”逃避”という展開は、聡実くんというキャラクターにリアリティを与えてくれました。一人で不幸を背負い込んでいるような気分の時は、何事にも一生懸命になれないですからね。

そして、原作ではさほど出番のなかった合唱部の部員たち。

後輩の和田は聡実くんがソプラノの役目を出来なくなった際、ピンチヒッターとしてソリを練習させておく程度の存在。声変わりによる苦痛とプレッシャーを和らげるため、「いっそソリを辞退してはどうか?」と聡実に提案するような気配りのできる子でした。

それが映画版では聡実くんの事情を知らず、練習をサボりがちになった彼にズバズバと不満を漏らすような強気な子に変化していました。

後聖人くんの演技が光ってましたね。めんどくさい感じがよく出ていました。

副部長の中川に至っては、原作では女性側のソリを任される場面でほぼ終了。

映画では部への愛ゆえに狂犬と化した和田を宥めつつ、部内の調和を司る重要な部員として存在感を発揮しました。

八木美樹さんが演じられていましたが、人生何度目かね?と思わせる達観した雰囲気がありました。

終盤には聡実、和田、中川が校門付近で言い争いをする場面を見た狂児が恋愛による三角関係と勘違いし、茶化したところで聡実を激怒させるという、これまたオリジナルの展開で思春期感を増し増しにしてくれました

原作では、何となく気楽そうに見える狂児に思わず聡実くんが感情をぶつけてしまったというものでしたが、トリガーがはっきりした分、映画の方が説得力はあったように思います。

映画部の子は何者?

映画部というか、正式には映画を見る部のようですが、映画版オリジナルで現れたこの空間が私にはどこか心地よかった。

逃避という手段を選んだ聡実くんにとってもそうだったのでしょう。

カーテンを締め切った暗い部室。棚に並ぶVHSと、古びたビデオデッキ。

所属のほとんどが幽霊部員であり、活動しているのは栗山くんただ一人。

聡実くんも実は掛け持ちの幽霊部員として認められているらしく、現実から逃れたい時には彼の隣に座って愚痴をこぼしています。

この栗山くんがまた妙にミステリアスな雰囲気を醸し出していて、聡実くんの話に耳を傾けつつ、良い感じに聞き流してくれる。

映画を見る部には巻き戻し機能の壊れたビデオデッキが一台しかなく、一度観た映画は二度と観ることができないという仕様がどこか感慨深い作りなんです。

これは本来的に劇場で観る映画は巻き戻しが許されないからこそ味わい深いという意味なのか、それとも一期一会の出会いに後悔を持たないようにしてほしいというメッセージなのか。

その辺は定かではないですが、どこか考えさせられる設定は何やら脚本家の意図を感じますね。

紅をクローズアップ

今作で一番の見せ場となる、聡実くんによる紅の熱唱シーン。

原作のままでも十分に泣ける展開でしたが、映画版ではここでも工夫を凝らしてくれました。

狂児の音域に合いそうな曲をいくつかピックアップしてくれた聡実くん。一曲ずつ試してみながら途中で紅を歌ってばかりいたというのは原作でも簡単に触れられていましたが、映画では物語の中盤で冒頭の英語歌詞を和訳してみるという場面がありました。

関西弁に訳しているのがまた面白いところですが、簡単に言うと愛する人が自分の元から去ってしまい、悲しみにくれるという内容でした。

合唱コンクールの当日、狂児の車が他の車に衝突されていた場面を目撃した聡実くんは、狂児の身に何かあったのではないかと不安で仕方なく、同日に開催されるカラオケ大会の会場を訪れる。

狂児は地獄へ行ったと組長から言われ、彼に対する鎮魂歌を一曲歌っていくように促された聡実くんは、狂児がきっと選曲したであろうXJAPANの『紅』を懸命に歌う。

ここであの和訳をした効果が、存分に発揮されるわけですね。

狂児が去ったと思い込んだ聡実くんの歌う場面は、これまで彼と過ごした時間を思い返しながら激しく感情を吐き出す名シーン。

それが途中で曲の内容に触れることで神シーンに昇格されました。

まさしく、神の一手といえるでしょう。

ラストシーンで狂児の腕に見られた刺青は!?

カラオケ大会の後、忽然と姿を消した成田狂児。

卒業式の日を迎えた聡実くんは彼の所属する組のある町を訪れたが、ホテルの開発が進められるらしく取り壊し前のその場には誰の姿も見られなくなっていた。

幻だったのではないかと栗山に言われた冗談から、少し不安な気持ちになっていた聡実くんは、ポケットの中に狂児から貰った名刺を発見。

「おったやん」という台詞の後、エンドロールが流れ始めます。

ここで幕が閉じるのかと思われましたが、その後に現れた狂児は開発が進むホテルの前に佇みながら聡実くんと携帯電話で話していました。

彼の腕には”聡実”と刺青が彫られており、その説明はないままに「カラオケ行こ!」という台詞を口にしたところで映画は終了しました。

これは本編の途中で聡実くんが狂児に話していた、好きなものを嫌いと言い続ければそれを彫ってもらえるのではないかという内容を実践した結果だと推測できました。

狂児はその後のカラオケ大会で歌ヘタ王に選ばれてしまい、組長から刺青を彫られた。

大好きな聡実くんの名前をあえて嫌いと言い続け、彫ってもらうことに成功したのでしょう。

映画では推測に過ぎない内容ですが、原作ではそれについての説明が描かれているので、これは間違いありません。

まとめ

いかがでしたか。

コメディ映画かと思いきや、思わず胸がほっこりする青春物語でした。

実は映画『カラオケ行こ!』の原作には続きがあって、そこでは狂児と出会った頃から4年後の聡実くんの姿が描かれています。

大学生になった聡実くんを描いた続編『ファミレス行こ。』もまた大変面白い作品となっていますので、興味を持った方はこちらも読んでみてください。

合わせて読みたい
和山やまの漫画『女の園の星』についてのレビューはこちら。

予告編

映画『カラオケ行こ!』の予告編を紹介しておきます。

配信情報

【Hulu】今すぐ始める

【DMM TV】で観る

映画『カラオケ行こ!』は上記以外にも複数のサブスクで配信されているようなので、興味のある方はそちらも合わせてご覧ください。

それでは、また。

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