小説家『北村薫』は推理・ドラマ・文学と何でもありの最強作家だった。

小説家『北村薫』は推理・ドラマ・文学と何でもありの最強作家だった。 アイキャッチ画像 小説/漫画
北村薫著『ターン』新潮社文庫刊

※本ページはプロモーションを含みます。

人間も捨てたものじゃないでしょ?パイヨミです。

北村薫とは

北村薫は日本の小説家であり、推理作家としての活躍が有名でしょうか。時の三部作と呼ばれる「ターン」は実写化もされているため、知名度は高いかもしれません。

小説の他にはエッセイやアンソロジーの編纂、国語教師、大学教授、文学賞の審査委員、本格ミステリ作家クラブ会長など、調べてみるととんでもないエリートでした。

デビュー当時は覆面作家として活動していたようですが、国語教師をしながら小説を執筆し、創元推理文庫の編集委員にもなってしまうというのは、あまりにハイスペック過ぎやしないか。

私が初めて北村薫の作品に触れたのは、高校生の頃でした。友人に勧められて読み始めましたが、もちろんその時は経歴について一切知りませんでした。

作家の背景事情まで調べてから本を読み始める人は稀だと思いますし、私もその他大勢と同じ感覚の持ち主でした。

無駄のない文章

何者か知らず、作品のみに触れて私が最初に感じたのは、非常に読みやすいということでした。

後々になってその凄さに気付かされましたが、北村薫はわずか数ページのうちに私の頭の中で世界を構築したのです。

必要な情報は端的に述べられ、主人公の人柄、現在の状況、登場人物の相関図まですらりと描いてしまう。これは簡単なように見えて、非常に高度なテクニックです。

短編を得意とする作家はこの手の能力に長けている傾向にありますが、北村薫のそれはあまりに無駄がなく、それでいてさりげない。始めからすんなりと物語に没頭することができるのです。

物語の冒頭で語る内容は、どこか説明的になることもあれば、唐突に話が進んでしまいイメージがなかなか湧いてこないこともよく起こります。

それだけ冒頭の語りは難度の高い作業ということになるのですが、無駄な肉を削ぎ落としたようにスマートな北村薫の文体を読むと、毎度心を揺さぶられます。

優れた推理作家

もちろん、物語の内容も一級品です。推理要素を含んだ作品を数多く執筆されており、そのどれもがあっと驚かされる展開になっています。

伏線の回収がえげつないくらい巧妙で、物語の冒頭からすべてが問題解決の糸口となっているのです。

主人公が働く職場や生活環境、そういった本題とは別の案件として起きるエピソードはさすがに関係ないだろうなぁ、と思いつつページを捲っていくと、すべて繋がっていたのか!と騙された気分を味わうわけです。

読み慣れてくると、それも何となく予想することが可能になってきますが、「理由は分からないけど、このエピソードは怪しい……」と感じる程度で、細心の注意を払いつつ読み進めても完全に先を言い当てることは不可能でした。

恐らくこれは、ヒントとなる小話が物語全体に上手く溶け込んでいるからこそなせる技なのでしょう。取ってつけたようなわざとらしい流れや、後づけの説明だとやはり違和感は拭えず、そういった溶接跡のような痕跡がまるでないため、すんなりと読み進んでしまう。

途中に挟まれるお話もまた上手くできていて、正直これだけでも物語としては成立してしまうんです。それに加え、大きな枠としての推理要素が隠されているからこそ、こちらは度肝を抜かれるんですね。

そして、最強たる理由

文章が端的で、推理の読み応えもある。そんな作家はわりと思いつくかと思います。

私の敬愛する貴志祐介もそれに当てはまりますし、あの人には徹底的な取材力と、天才的とも呼べる論理的思考に裏づけされたリアルな恐怖という持ち味がありますから、その限りではないでしょう。

まぁ貴志先生に関しては別の機会に特集させていただくとして、では北村薫のどこにそれほどの魅力があるのかと言えば、ずばり表現の美しさです。

まるで純文学を思わせる深み、透き通るような情景描写は読んでいて心地よさすら覚えます。あくまでも淡白ゆえ、物語の進行を妨げるような胃もたれするものではなく、焦ったさを感じずにさくさくと読み進められます。

推理小説に詩的な表現は必要ない。そう考える方もいるかもしれません。正直、私も同じタイプではありますが、北村薫の小説は推理小説というカテゴリには属さないと私は思います。

純文学でもなければ、単なるエンタメ小説でもない。あらゆるカテゴリを内包した、いわば北村薫というジャンルを確立している。

これこそが、先生の最強たる所以だと思います。

まとめ

読みやすい文章、驚きの展開、そして、吟味された言葉選び。三拍子揃った最高の小説を是非皆さんにも体感してもらいたいものです。

本を読むなら、やっぱり印刷された紙の手触りに限る。と言いたいところですが、さすがに最近は電子書籍の利用も増えてきました。

以前に引越しをする際、新しい部屋に蔵書を並べるスペースがなかったので、紙の本の大半は泣く泣く手放した次第です。特に漫画は巻数も多くかさばりますからね。

今では電子書籍の利用を始めて良かったと思っています。軽くて腕が疲れにくいし、何より部屋を圧迫しない。

あなたが肉体的にタフで、お部屋が余っているような人でなければ、試しに一度利用してみても良いかもしれません。世界が変わりますよ。

北村薫著『空飛ぶ馬』の電子書籍を読むなら

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