漫画家『伊藤潤二』とは? 展示会を記念し、作品のテイストをご紹介しておこう。

伊藤潤二の画像 その他エンタメ
© 東川哲也/朝日新聞出版

ひぃっ!パイヨミです。

漫画家『伊藤潤二』とは

五歳児の頃から怪奇漫画に熱中し、漫画を描き始めるような天才的人物。

一時は歯科技工士という道を歩みますが、1986年の楳図賞創設にあたり、楳図かずおに自身をアピールしようと一念発起。見事に佳作入選し、ホラー漫画家としての『伊藤潤二』が誕生します。

それにしても、初の投稿作品が「富江」とは、末恐ろしい新人が現れた!と思われたに違いありません。

伊藤潤二は1986年から活動をされていますが、特に注目を浴び始めたのはつい最近のことのように思われます。きっかけは2018年の第30回アイズナー賞に『伊藤潤二自選傑作集』がノミネートされたことでしょうか。

それ以降、世界的な漫画家として認知された彼は、『地獄星レミナ』や『フランケンシュタイン』などの作品が次々と賞を獲得していきます。

2023年には第50回アングレーム国際漫画祭にて特別栄誉賞を受賞、この勢いに乗ってか、前々から予定されていたのか、2024年4月27日から2024年9月1日の期間、世田谷文学館で「伊藤潤二展 誘惑」が開催されるに至ったわけです。

ヒロインが死ぬほど美しい

伊藤潤二作品の魅力といえば、まず浮かぶのはヒロインが恐ろしく美人である点でしょう。
作業はほぼ一人か、アシスタントを一人雇う程度らしく、そんな環境にも関わらず、背景から登場人物まですべてが美しく緻密に描かれています。

精緻な美しさとグロテスクの融合により、本来は目を背けたくなる光景すら絵画作品のような印象を受け、まじまじと眺めてしまうから不思議である。

「ホラーは美しくなければならない」

私にホラーの楽しみを教えてくれた方は以前にそうおっしゃっていましたが、伊藤潤二の作品に触れるとその言葉の意味がよく分かります。

実をいうと、私はホラー作品が昔は苦手だったのですが(だって、怖いし。パラノーマル・アクティビティとか今でもトラウマ……)、伊藤潤二という存在は、私の価値観そのものをひっくり返してしまいました。

それほどに先生の作品は美しく、面白いのです。

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恐怖と笑いのバランスが絶妙

さらに素晴らしいところは、恐怖と笑いの見事な掛け合いです。
本人もギャグが好きだと明言しており、意図的に笑いの要素を含めるようにしているらしい。

ホラー漫画の本質である恐怖や恐ろしさ、グロテスクな光景などはもちろん、そこに添えられる笑いの要素によって、彼の作品が”らしさ”を見せるのです。

個性的な登場人物も多く存在し、人殺しですら思わず愛着が湧いてしまうほどユニークで驚きの展開を見せてくれます。

作中に起きる出来事も奇想天外なら、登場人物の反応もまた一般人の感性とは遥かにかけ離れており、予想の斜め上を行くリアクションに思わず笑ってしまう。

この作風はもはやお家芸と言っても良いほどに洗練されており、人の心理を分かったうえで、あえて外しているような印象を受けてしまいます。

後を引くラスト

忘れてはならないのが、物語の展開力です。

伊藤潤二作品は恐怖体験を理論立てて解明していくタイプではなく、どちらかといえば不可避で不明瞭な現象に迷い込み、それらに翻弄されるうちにいつしか抜け出せなくなる迷路のようなものです。

そもそも出口の存在しない話も多く、そこがまた後を引くと言いますか、読後感が素晴らしくひやりとさせられるのです。

不可解なものの正体が解決されぬまま、唐突に終わる物語。
主人公はこの後どうなったのか。助かる? 死ぬ? これほど恐ろしい状況が放置されれば、さらなる犠牲者が出るだけでなく、何なら世界すら滅ぼしかねないのでは。

不穏な気持ちを抱かせたまま、気づけば胸のうちに深く刻み込まれている。私にはこれこそが、ホラーの真髄のように思えてなりません。

短編作品が多い方なので、ホラーが苦手という方もぜひ気軽に読んでみてほしいものです。

ちょっぴり、今回の展示情報を

過去には「怪奇サミット」、「マニアック展」、台湾にて「伊藤潤二恐怖美学体験大展」などが開催されてきましたが、今回の「伊藤潤二展 誘惑」は初の大規模な展示会となります。

『富江』や『双一』など人気シリーズの原画やイラストに加え、新たに書き下ろした新作も公開されているようなので非常に楽しみです。

私はじっくりと展示を観てまわりたい気質ゆえ、少し落ち着いた頃に伺おうかと思っています。
とはいえ、はやる気持ちがないと言えば嘘になるので、時期を見てなるべく早いタイミングで動きたいですね。

魅力的なグッズもたくさん販売されているみたいなので、その辺りも手に入れたいなという意気込みのもと、展示会に赴くまでの間、本棚に飾ってある歴代の作品を再度読み漁りたいと思います。

それでは、また。

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